このチュートリアルでは、平面図と輪郭曲線を用いた典型的なボート船体のロフトテクニックを紹介します。モデリングに使用する伝統的な船体形状は、古いBoat Builder’s Handbook誌に掲載されたデザインを元にしています。この船体形状に似たデザインはインターネットからも多数入手できます。
このチュートリアルでは次のことを学習します。
● | 2D図面からの3D曲線の作成 |
● | 曲線のリビルドと単純化 |
● | 船体形状を「フェア」にするための分析テクニックの使用 |
● | 3D曲線からのサーフェスのロフト |
RRhinoはいろいろな分野のマリンデザイナーにご使用頂いています。マリンデザインの詳細、チュートリアルについては、RhinoのWebサイト(www.rhino3d.com)をご覧ください。
このチュートリアルで使われているイメージは、サーフェスの背面の色を変更する表示設定が使用されています。
前面 (1)、背面(2)。 黄色の矢印はサーフェスの法線方向を示しています。また、緑色はサーフェスの背面を示しています。
これにより、オブジェクトの法線方向が分かります。詳細については、Rhinoのヘルプの背面の設定をご覧ください。
このチュートリアルで使用される海洋用語
舷弧
ボートの側面から見た船首から船尾までの反り量(弧度)。
チャイン
船底が平らまたはV字型をした船の側面と底面が交わる線。
トランサム
船尾が角型のボートの張板部分。
フェア
「フェア(Fair)」の意味をめぐっては、海洋業界ではさまざまな意見が聞かれています。明確な定義はありませんが、何を指すかは共通に理解されているようです。サーフェスのフェア処理と言えば、従来、ボートのサーフェスと関連付けられて考えられていますが、オブジェクトを問わずすべての見えているサーフェスがこの処理の恩恵を受けられると言えるでしょう。Rhinoでは、サーフェスをフェアにするための最初の手がかりとして、サーフェスを表示するアイソカーブの間隔をチェックします。
アイソカーブの間隔以外にも、フェアな曲線とサーフェスを作り出すための条件がいくつかあります。フェアな曲線やサーフェスすべてがこれらの条件を満たしているというよりも、むしろフェアな曲線やサーフェスは多くの場合これらの条件を満たしていると言えます。モデリングをする際に、これらの条件を念頭に入れておくと最終的により満足のいく製品を作ることができます。
フェアなサーフェスを作成するためのガイドラインとして次の事項が挙げられます。
● | 曲線の形を作成するために、可能な限り少ない制御点を使用する。 |
● | サーフェスの形を作り出すために、可能な限り少ない曲線を使用する。 |
船体の線は、元となる図面を背景ビットマップにし、それをトレースして描きます。線を引いてサーフェスを作成する前に、まず線のフェアの度合いをチェックします。
トレースした線は図の通りです。これらから行うロフト作業を踏まえて、舷弧とチャインが船首と船尾よりも延長されています。
練習を始めるには
4 | チュートリアルモデルファイルVictory.3dmを開きます。 線はPlanレイヤとProfileレイヤにあります。 |
平面図と側面図からマッチする曲線のペアをそれぞれ選択し、CurvatureGraphコマンドを使い、その曲線がフェアかどうかを判断します。ここでは、背景ビットマップからトレースした曲線を使います。これらはフェアではありません。つまり、言い換えると、舷弧の端から端まで、曲線が滑らかに接続されていません。フェアではない曲線がある場合は、点を調節してフェアにする必要があります。舷弧曲線から始めましょう(ボートの形の一番上の曲線です)。舷弧は、ボートの外見に一番大きな影響を与える曲線です。
曲率グラフには連続性があり、その曲線の特徴を表しています。グラフが曲線の上に表示されている時は、曲線が下に下がっていることを意味します。反対に、グラフが曲線の下に表示されている時は、曲線が上に上がっていることを意味します。グラフと曲線が交差している点は、変曲点(曲線に抑揚のない点)です。
各曲線を選択し、Rebuildコマンドを使い点を削減し、次数を設定します。点の数は必要最低限にとどめます。
CurvatureGraphコマンドを使い、曲線のフェアの度合いを再びチェックします。曲率グラフがまだ満足のいく結果にならない場合は、グラフが滑らかになるまで制御点を移動します。モデルのサーフェスを作成し始める前に、モデルの残りの曲線にも同じ作業を繰り返し、曲線が確実にフェアな状態になっていることを確かめてください。
ここまでの作業は、2D曲線を使い行ってきました。サーフェスをロフトするには、これらの平面曲線を使い3D曲線を作成します。平面曲線はその後、削除できます。
3D Linesレイヤを現在のレイヤにし、それぞれの曲線を側面ビューと平面ビューから選択します。Crv2Viewコマンドを使い、2D曲線のx、y、z座標を併せた3D曲線を作成します。入力の2D曲線が平面曲線でなければこのコマンドでは期待する結果は得られません。
3D曲線を作成する
1. | 3D Linesレイヤを現在のレイヤにします。 |
2. | 平面と側面の舷弧曲線を選択します。 |
3. | Crv2Viewコマンドを開始します。 選択した舷弧曲線の3D曲線が作成されます。 |
4. | 作成された3D曲線が満足のいくものであれば、最初にした2D曲線を削除するか、非表示にします。 |
5. | Crv2Viewコマンドをチャイン曲線にも繰り返します。 |
船底パネルをロフトするには、パネルの先端が一点となってはなりません。ロフトされた結果は、長方形にならなければなりません。曲線が中心線を超えて延長されているのはこのためです。後で望みの形にトリムできるので、曲線はまず長方形のサーフェスにロフトされます。このチュートリアルで使用しているVictoryモデルの曲線は、船底の中心線の曲線以外は作業がしやすいように既に延長されています。
中心線をコピーする
中心線のコピーを使って、船体の底をロフトするための新しい延長曲線を作成します。
1. | 同じ位置オプションを使用して中心線をコピーします。 |
2. | 中心線を非表示にします。 |
中心線を短くする
1. | 中心線を選択します。 |
2. | SubCrvコマンドを開始します。 |
3. | 曲線の始点のプロンプトで、端点オブジェクトスナップを使用して、イメージのように中心線の端点をクリックします。 |
4. | 曲線の終点...のプロンプトで、中点オブジェクトスナップを使用して、イメージのように曲線の中点をクリックします。 |
中心線を延長する
1. | Extendコマンドを開始し、境界オブジェクトを選択...のプロンプトでEnterキーを押し、任意に延長します。 |
2. | 延長する曲線を選択...のプロンプトで、タイプをスムーズに設定して、中心線を前端近くで選択します。 |
3. | チャイン曲線と舷弧曲線と共に整列するよう、図のように平面図に曲線を描きます。 これで、ロフトして船底のサーフェスを作成するための曲線ができあがりました。 |
4. | 制御点を表示(F10)して、曲線を確認してください。 |
側面と船底に作成したエッジ曲線から、サーフェスをロフトしましょう。船底のサーフェスをロフトすることから始めます。それが終わったら、上のエッジを使い側面をロフトします。
船底パネルをロフトするには、Loftコマンドを使いチャインと中心線の2本のエッジを選択します。ここでは、この前のステップで作成した新しい中心線を選択します。
チャインと中心線をロフトする
1. | チャインと中心線を選択します。 |
2. | Loftコマンドを開始します。 |
3. | ロフトオプションダイアログボックスの断面曲線オプションのリビルド...を選択し、制御点の数を15に設定してOKをクリックしてロフトを作成します。 |
側面と船底をロフトする
1. | サーフェスエッジと舷弧曲線を選択します。 |
2. | 側面のパネルにもロフトを繰り返します。 |
3. | ロフトオプションダイアログボックスの断面曲線オプションのリビルド...を選択し、制御点の数を15に設定してOKをクリックしてロフトを作成します。 |
側面と船底のサーフェスがうまく作成できたら、中心線から0.5インチはずれたところに船尾を作成し、側面と船底の両サーフェスをこの船尾に合わせてトリムします。これを行うにはTopビューポートに、船体より長い、中心線から右に0.5インチずれた場所に線を描きます。
トリム線を引く
1. | Topビューポートに、ボートの船体よりも長い線を中心線(x軸)に沿って作成します。 |
2. | Topビューポートで、この線をボートのサーフェスに向けて0.5インチオフセットします。 これで次のステップで使用する曲線を作成できます。ボートの下方中心の左右中間部に小さい隙間をキール用に作成するためです。 |
トリム線に沿って側面と船底をトリムする
4 | オフセット曲線を使用し、船底(1)と側面(2)をイメージのようにトリムします。 |
このチュートリアルでは、すべてのサーフェスを仕上がりのサイズよりも大きく最初に作成してからボートの大きさに合わせてトリムします。トランサムも同じ方法で作成します。
トリムするために十分なサーフェスエリアを確保するため、トランサムの中心線を舷弧の上と中心線の下にそれぞれ1、2フィート延長します。トランサムの中心線でボートのサーフェスをトリムします。
中心線を延長する
1. | Profileレイヤをオンにし、Extendコマンドを開始します。 |
2. | 境界オブジェクトを選択、または延長長さを入力。任意に延長する場合はEnterを押しますのプロンプトで、Enterキーを押します。 |
3. | 延長する曲線を選択…のプロンプトで、Frontビューポートにカーソルを置き、タイプを自動に設定して、トランサムの中心線の上の近くを選択します。 |
4. | 延長の終了位置のプロンプトで、トランサムの中心線の一番上よりも更にその上に点を選択します。 |
5. | 延長する曲線を選択…のプロンプトで、トランサムの中心線の下近くを選択します。 |
6. | 延長の終了位置のプロンプトで、トランサムの中心線の一番下よりも更にその下に点を選択し、Enterキーを押します。 |
ボートのサーフェスをトリム、
結合する
1. | トランサムの中心線を選択します。 |
2. | Trimコマンドを開始します。 |
3. | 仮想交差を使用=はいに設定します。 |
4. | トリムするオブジェクトを選択…のプロンプトで、Frontビューポートにカーソルを置き、トランサムの側面と船底のサーフェスを選択します。 |
5. | ボートの船底と側面を結合します。 |
ボートのサーフェスをミラーする
RightまたはTopビューポートで、船体の2つのサーフェスを中心線でミラーします。EdgeSrfコマンドを使い、ミラーした船体を接続するサーフェスを作成します。
1. | 2つのサーフェスを選択します。 |
2. | Mirrorコマンドを開始します。 |
3. | 対称軸(ミラー平面)の始点…のプロンプトで、Topビューポートにカーソルを置いて0とタイプしEnterキーを押します。 |
4. | 対称軸(ミラー平面)の終点のプロンプトで、直交モードをオンにして対称軸をx軸に沿ってドラッグして、クリックします。 |
キールサーフェスを作成する
1. | EdgeSrfコマンドを開始します。 |
2. | 2、3、または4個の曲線を選択のプロンプトで、船底の内側にあるキールに沿った2本のエッジを選択します。 |
3. | EdgeSrfコマンドを繰り返します。 |
4. | 2、3、または4個の曲線を選択のプロンプトで、船の側面内側にある船首のキールに沿った2本のエッジを選択します。 |
サーフェスを押し出す
トランサムサーフェスを作成するには、トランサムの中心線を押し出します。
1. | Frontビューポートで、延長したトランサムの中心線を選択します。 |
2. | ExtrudeCrvコマンドを開始します。 |
3. | 押し出し距離のプロンプトで、コマンドラインオプションを両方向=はいに設定します。 |
4. | Perspective、Top、Rightビューポートで、延長線をボートのサーフェスを超えてドラッグします。 |
トランサムをトリムする
トランサムのサーフェスをボートとボートのエッジをつないだ線でトリムします。
1. | ボート船尾の上部の2本のエッジの間に線を引きます。 |
2. | Trimコマンドを開始します。 |
3. | 切断オブジェクトを選択のプロンプトで、ボートのすべてのサーフェス(キールサーフェスとボートの上をつなぐ線も含む)を選択し、Enterキーを押します。 |
4. | トリムするオブジェクトを選択…のプロンプトで、ボートの線とサーフェスの外側のトランサムサーフェスを選択し、Enterキーを押します。 |
トランサムが完成しました。
エラーがないかをチェックする
1. | すべてのサーフェスを結合します。 |
2. | ShowEdgesコマンドを使い、結合をチェックします。 オープンエッジを表示します。オープンエッジは、他のサーフェスと結合されていないサーフェスエッジです。この場合、オープンエッジとなっているのはボートサーフェスの外側を囲むエッジだけで、サーフェスの間にあるエッジはすべてサーフェスと結合されているはずです。 サーフェスを構築して結合し、オープンエッジがないことが確認された後で、そのサーフェスを曲率解析ツールでチェックしてみるとよいでしょう。 |
最後に、甲板サーフェスを作成します。輪郭線では、2本の曲線が甲板曲線のシルエットとして表されています。この曲線を使い甲板を作成します。
Projectコマンドを使い、垂直線をボートの側面に投影します。この線が、曲線の端を示す印となります。Frontビューポートで、甲板の中心線曲線の端から、ボートの側面にある投影された曲線の端まで曲線を描きます。平面モードを使い曲線を平面に保ちます。Orthoを使い最初の3点の制御点を配置し、中心で揃えます。
甲板の垂直のエッジをボートに投影する
1. | ボートと垂直線を選択します。 |
2. | FrontビューポートでProjectコマンドを使い、曲線をボートに投影します。 曲線はボートの両側に投影されるので、断面曲線をどちらの側面にも作成できます。 |
断面曲線を作成する
1. | ステータスバーの平面モードペインをクリックして平面モードをオンにします。 |
2. | Rightビューポートで、Curveコマンドを使用して、甲板の中心線曲線の一番上の端から、ボートに投影された曲線の一番上に制御点曲線を作成します。 直交モードをオンにして、直線に最初の3つの制御点を配置します。 Endオブジェクトスナップを使い、ボートに投影された曲線の一番上に最後の点を配置します。 |
3. | CurvatureGraphコマンドを使用して曲線をチェックします。 |
甲板のサーフェスを作成する
1. | Sweep2コマンドを使い、甲板のサーフェスを作成します。 |
2. | レール曲線を選択のプロンプトで、中心線曲線とボートのエッジを選択します。 |
3. | 断面曲線を選択…のプロンプトで、甲板の中心線曲線からボートに投影した曲線で作成した断面曲線を選択し、Enterキーを押します。 |
甲板をミラーする
1. | Mirrorコマンドを使い、甲板のサーフェスをもう片方の側にコピーします。 対称軸(ミラー平面)の始点…のプロンプトで、Topビューポートにカーソルを置いて0とタイプし、Enterを押します。 |
2. | 対称軸(ミラー平面)の終点…のプロンプトで、Topビューポートにカーソルを置いて直交モードをオンにして対称軸をドラッグします。 |
隙間を埋める
4 | EdgeSrfコマンドを使い、船首の先に小さな三角形のサーフェスを作成します。 |