2 - Rhinoのオブジェクト

Rhinoの基本ジオメトリック(形状)オブジェクトは点、曲線、サーフェス、ポリサーフェス、ソリッド、軽量押し出しオブジェクト、そしてポリゴンメッシュオブジェクトです。

この章では、Rhinoでのモデリングの数学的基礎を説明します。(Rhinoを使い始めるにあたって、この章のすべての内容を理解する必要はありません。)

NURBSでモデリングする理由

NURBS(非一様有理Bスプライン)は、単純な2次元の線、円、円弧、直方体から、最も複雑な3D自由有機サーフェスやソリッドに至るまで正確に定義することのできる数学的表現方法です。NURBSモデルはその柔軟性と正確性から、イラストレーションやアニメーション、製造に至るまで、どのような過程にも使うことができます。

NURBSジオメトリは、自由で流れるような、それでいて機能性も重視される3D形状を作成するデザイナー達の業界標準です。Rhinoは、マリンデザインや航空宇宙デザイン、自動車の内装・外装のデザインに使用されています。家庭用品やオフィス用品、家具、医療機器や運動設備、靴やアクセサリーのメーカーでも、自由形状モデルの作成にRhinoが使われています。

NURBSモデリングはまた、プロのアニメーターやグラフィックアーティストにも数多く使用されています。ポリゴンモデラーではなくNURBSモデラーを使用する利点は、NURBSサーフェスにはファセットがないということです。モデルのレンダリングはどのような解像度でも行えます。どの解像度でも、モデルからメッシュを作成することができます。

次もご覧ください。

NURBSの数学的な詳しい説明についてはNURBSとは?をご覧ください。

必要ではありませんが、それ以上に詳しい情報をご覧になりたい方はこちらのWikipediaの記事をご覧ください: Non-uniform Rational B-Spline

点オブジェクトは、3D空間の中の1つの点を表します。点オブジェクトはRhinoのオブジェクトの中で一番単純なオブジェクトです。点オブジェクトは、空間のどこにでも配置することができます。点オブジェクトは、他のオブジェクトの配置の目安として使用されることが多くあります。

曲線

Rhinoの曲線はワイヤーのようなもので、真っ直ぐなものやねじれたもの、開いたものや閉じたものなど、自由に形を作ることができます。ポリカーブはそれぞれの端と端でつながれた複数の曲線セグメントで構成されています。

Rhinoは曲線を作成するためのツールを豊富に取り揃えています。これらのツールを使うと、直線、線セグメントを接続したポリライン、円弧、円、多角形、だ円、ヘリカル、スパイラルなどを作成することができます。

曲線の制御点を使用して曲線を作成することも、指定した点を通るように曲線を作成することもできます。

イメージ

Rhinoで作成できる曲線には、線、円弧、円、自由曲線、これらの組み合わせなどが含まれます。曲線には、開いた状態と閉じた状態、平面状、または非平面状があります。

サーフェス

サーフェスは伸縮自在な長方形のゴムのシートに似ています。NURBSの形式は平面や円柱のような簡単な形状から、フリーフォーム、彫刻したような形状のサーフェスまで表現することができます。

Rhinoのサーフェス作成コマンドはすべて、同じオブジェクト、つまりNURBSサーフェスを作成します。Rhinoには直接サーフェスを作成する、または既存の曲線からサーフェスを作るツールがいろいろ用意されています。

すべてのNURBSサーフェスの形は、本質的に長方形です。

円柱のような閉じたサーフェスでも、長方形の一枚の紙を巻いて両端を合わせたようになっています。サーフェスのエッジが位置を合わせて完全に接触している部分をシームと呼びます。

開いたサーフェスと閉じたサーフェス

サーフェスは開いているかまたは閉じているかどちらかの状態です。開いた円柱は一方向にだけ閉じています。

トーラス(ドーナツ形)は二方向に閉じています。

トリムサーフェスと非トリムサーフェス

サーフェスはトリムされた状態(トリムサーフェス)か、トリムされていない(非トリムサーフェス)状態かのどちらかです。トリムされた状態のサーフェスは、基底にあるジオメトリック形状を定義するサーフェスと、そこからトリムされた部分を印すトリム曲線の2つの部分で構成されています。

トリムサーフェスは、サーフェスをトリムあるいは分割するコマンドを使用して曲線や他のサーフェスを使って作成します。トリムサーフェスを直接作成するコマンドもあります。

サーフェスの形は長方形のパターンに配置された制御点で定義されます。

サーフェスがトリムサーフェスであるか非トリムサーフェスであるかを把握しておくことは重要です。Propertiesコマンド を使うと、サーフェスがトリムされているかどうかを調べることができます。Rhinoのコマンドの中には、非トリムサーフェスしか扱わないものがあり、またソフトウェアによってはトリムされたNURBSサーフェスをインポートしないものがあります。

トリム曲線は、基底サーフェス上に位置します。基底サーフェスはトリム曲線より大きいことがありますが、Rhinoはトリム曲線の外側の部分は描画しないので、基底サーフェスは見えません。それぞれのトリムサーフェスは、その下のトリム基底サーフェスジオメトリについての情報を保持しています。トリムサーフェスはUntrimコマンドを使い、トリム曲線の境界線を取り除いてトリムされていない状態に戻すことが可能です。

サーフェスを横断するトリム曲線がある場合、そのトリム曲線はサーフェスの制御点の構成とは何の関係もありません。これは、そのようなトリムサーフェスを選択し、制御点をオンにすれば分かります。制御点をオンにすると基底サーフェス全体の制御点が表示されます。

平面曲線からサーフェスを作成する場合、そのサーフェスはトリムサーフェスになることがあります。図のサーフェスは、円から作成されました。制御点表示でサーフェスの長方形構造を表示することができます。

Untrimコマンドを使用すると、トリム曲線をサーフェスから取り除いて基底のトリムされていない長方形型のサーフェスに戻すことができます。

サーフェスのアイソパラメトリック曲線とエッジ曲線

ワイヤフレーム表示では、サーフェスは交差する曲線の集まりのように見えます。これらの曲線はアイソパラメトリック曲線あるいはアイソカーブ.と呼ばれます。これらの曲線はサーフェスの形状をイメージしやすいように使われています。アイソパラメトリック曲線はサーフェスは定義せず、画面でサーフェスが見えるよう視覚補助として使われます。サーフェスを選択すると、そのサーフェスのアイソパラメトリック曲線はすべてハイライト表示されます。

エッジ曲線は、サーフェスの境界線です。サーフェスのエッジ曲線は他のコマンドの入力情報として使用することができます。


アイソカーブ (1)、エッジ曲線 (2)

曲線とサーフェスの次数

NURBS曲線は次数、制御点、ノット、そして評価公式の4つで定義されます。

NURBS関数は、有理多項式で、NURBSの次数は多項式の次数です。

多項式は、y = 3x3 –2x +1のような関数です。多項式の「次数」は、関数の最も高い乗数です。例えば、3x3 –2x + 1の次数は3です。–x5 + x2の次数は5です。

NURBSモデリングの視点で見ると、(次数–1)は、それぞれのスパンで得られる最大の「湾曲」の数です。これは曲線の形状にどれだけ影響を与えられるかを決定します。

例えば:

曲線ジオメトリについての詳細は、Wikipediaの記事の「Gallery of Curves」をご覧ください。

制御点

制御点は、曲線やサーフェスの形状に影響を与えます。制御点は、位置、方向、そしてウェイトといった情報を持っています。曲線やサーフェスは制御点を動かすことで、形を微調整できます。。Rhinoには制御点を編集するためのツールが多数用意されています。制御点の操作は、後のいくつかのチュートリアルで紹介します。

制御点の表示機能

制御点を操作して曲線やサーフェスを編集するには、PointsOn(F10)コマンドを使って制御点を表示します。

制御点の編集を終了した後は、PointsOff(F11)コマンドを使うか、Escキーを押して、制御点を非表示にします。

ポリサーフェスの制御点はPointsOnで表示して編集することはできません。ポリサーフェスの制御点を編集すると、結合されているサーフェスのエッジをうっかり離してしまい、ポリサーフェスに「隙間」ができることがあるからです。特別なSolidPtOnコマンドを使用すると、ポリサーフェスの(制御点のように動作する)グリップ点をオンにすることができます。

制御点の位置の変更

制御点を動かすと曲線またはサーフェスは形を変え、スムーズに再描画されます。個々のまたは複数の点は、Move、Copy、Rotate、ScaleなどのRhinoの変形コマンドを使って操作することもできます。

制御点の追加、削除、再配置

曲線に制御点を追加すると、曲線の形をより細密にコントロールできます。InsertControlPointInsertEditPoint、そしてInsertKinkのようなコマンドを使用すると、曲線に制御点を追加することができます。

加えて、制御点を操作してキンクを取り除いたり、曲線を均一化したり、詳細を追加したり削除したりすることができます。

曲線やサーフェス上の制御点を自動的に配置し直すには、RebuildFairChangeDegreeSmoothといったコマンドを使用します。

制御点を1つずつ、またはまとめて手作業で移動したい場合は、制御点をドラッグしたり少しずつ動かしたりするコマンドや、MoveUVNHBarといったコマンドを使用します。

Deleteキーは、選択されている曲線の制御点を削除します。制御点を削除すると曲線の形が変わります。

ポリサーフェス

ポリサーフェスは、2つまたはそれ以上のサーフェスを結合したものです。ポリサーフェスで空間を包み込むものはソリッドを定義します。

ソリッド

サーフェスまたはポリサーフェスで空間を包み込んでいるものはソリッドと呼びます。ソリッドは、サーフェスまたはポリサーフェスが完全に閉じられた時にできます。Rhinoでは、1つのサーフェスからなるソリッド、ポリサーフェスのソリッド、押し出しソリッド、そしてメッシュソリッドを作成できます。

1つのサーフェスでできているソリッドは、サーフェスを巻いて、そのサーフェス自身のエッジを結合して作成されています。そのようなソリッドを作成するコマンドの例には、SphereTorusEllipsoidが挙げられます。1つのサーフェスでできるソリッド上の制御点は表示することができ、それらの制御点はサーフェスの形状を変えるために動かすことができます。

Rhinoのコマンドには、ポリサーフェスのソリッドを作成するものもあります。ポリサーフェスのソリッドを作成するコマンドの例には、PyramidCone、そしてTruncatedConeがあります。

SolidPtOnコマンドを使用すると、ポリサーフェスの(制御点のように動作する)グリップ点をオンにすることができます。

軽量押し出しオブジェクト

軽量押し出しオブジェクトは、NURBSオブジェクトに通常必要なアイソカーブのネットワークの代わりに輪郭曲線と長さのみを入力情報として使用します。BoxCylinderTubeExtrudeCrvコマンドは押し出しオブジェクトを作成します。押し出しオブジェクトは、開いた状態、または平面状のキャップで閉じることもできます。これらのオブジェクトは、必要な場合ポリサーフェスに変換して、編集のためのより多くの情報を追加することができます。そのためのコマンドがいくつか用意されています。

ポリゴンメッシュオブジェクト

レンダリングやアニメーション、ステレオリソグラフィ、ビジュアリゼーション、有限要素解析(FEA)など、ジオメトリを表現するのにポリゴンメッシュを使うモデラーが多いため、RhinoはMeshコマンドを使ってエクスポート用にNURBSをポリゴンメッシュに変換する機能を備えています。更に、メッシュ作成のためのコマンド(MeshSphereMeshBoxMeshCylinderなど)もメッシュオブジェクトを作成します。

メモ: メッシュモデルは簡単にはNURBSモデルに変換できません。オブジェクトを定義する情報が全く異なるからです。

しかし、Rhinoには、メッシュ上に曲線を作成したり、メッシュオブジェクトから頂点やその他の情報を抽出するなど、メッシュ情報を使用してNURBSモデルを作成する際の支援となるコマンドがいくつか用意されています。

 

 

Rhinoceros 6 for Windows © 2010-2018 Robert McNeel & Associates. 11-5-2020